断煙して2年が経った。2年以上会っていなかった人と会うと、非常に驚かれる。最後の喫煙者になったとしても吸い続けるつもりでいたのだが、最早そのような気合もない。しかし、今でもタバコを欲することは多い。山頂に登った時、海を目の前にした時、窓全開でクルマを運転した時等々。僕の場合は開放感のある場所に行くとタバコを欲しくなる。きっと脳が覚えているのであろう。人生において喫煙していた時間の方が多いのだから当然といえば当然である。10代の頃に至っては30分が禁煙の限界であった。
喫煙者である時から自分の毛髪や衣類に着くタバコの臭いが嫌いだった。フレグランスを使用していたので、周囲にとってはさらに不快であったかもしれない。食事の場合は尚更である。喫煙者であっても可能な限り禁煙席を選び、喫煙のために店外へ出るといった状態であった。大きな変化としては時間の感じ方が変わったことだ。以前は誰かと会うにも喫煙場所を見つけて喫煙する時間を考慮の上で待ち合わせ場所に向かう必要があった。これが毎回である。少なくとも10分以上の時間を別の事柄へのトレードオフが可能となったわけである。そして、何よりもタバコが無くなることへの一種の脅迫観念である。これが無くなったことが一番大きい。タバコが一箱切るとソワソワするのだ。数本レベルになると、余分に未開封の1箱がないと落ち着かない。無くなれば台風だろうが夜中だろうがタバコを買いにいくのである。時間に余裕が生まれたと言えるかもしれない。
確か喫煙が習慣付いた当時の販売価格がマルボロやラッキーストライクで1箱当たり250円であった。そして断煙した2年前のアメリカンスピリットが480円。4半世紀でみると毎年約7%のインフレである。そしてこの販売価格の内の6割強が税金として支払われている。国税、地区町村税、都道府県税、そしてたばこ特別税と消費税で構成されている。そのうち国と地区町村に半分弱。JTのデータによると、過去18年においても常に年間2兆円強の税収をもたらしている。そのうちのたばこ特別税は特定財源であり主に一般会計のおける長期債務の召還に当てられている。
一方でコストに関してはそれぞれの調査項目が異なるため、明確な指標が見つからない。金額として出てくるものは4兆円から7兆円となるようだ。コストとしては医療費、生産性損失、施設設備費用等である。いずれにせよ、コストが税収を上回る。しかし、収入部分においてはタバコの売り上げのみから発生する点は考慮すべきではないか。さらに世界全体でみると、世界保健機関(WHO)と米国国立がん研究所(NCI)の報告によると、2013-14の税収が約2690億ドル、コストが年間1兆ドルとのことである。もし毎年費用が収入を超過するのであれば撤退すべき事業である。しかしミクロレベルになると、赤字事業においても受益者がいるのも事実である。事実毎年一定の需要があるわけで、コストを変えずに収入を上げるとなれば販売価格を上げることになる。すると需要も減少するであろう。昨年、2016年末に米国カリフォルニア州はたばこ税の増税案を可決した。この場合は1箱あたり87セントから2,87ドルへと3倍近くの増税となり、8%程の値上げとなるようである。同州が見込むのが喫煙率9.4%から7.1%への減少。増収分は低所得者層への医療プログラムと喫煙予防プログラムへの向けられるようだ。
こうやって見てみると、国内においては将来的に少なくとも今の倍以上の価格がターゲットとなるであろう。公共スペースにおいては喫煙場所も目立たない場所へと移動している。今でも癖で喫煙場所を探してしまうが、見つけるのが難しいくらいだ。このことから社会的需要は減少してるのは確かである。僕個人としても、タバコをやめたことで損失したものが何も思いつかない。納税手段を失ったくらいだろうか。逆に自由度が増えた気がする。
Quit it now!